患者さんのこと その2 第一話

約14年前に卵巣子宮内膜症、チョコレート嚢胞の御相談でいらっしゃいました。当時40代半ばの方で、この時点で、7年前に右側の卵巣は嚢胞が6cmを超えていたので摘出されていました。残った左側の卵巣の嚢胞も、御相談にいらした時点で4cmで、主治医からは6cmを超えたら摘出と告げられていました。どうしても左側の卵巣を残したいとの強い希望をお持ちでした。

卵巣チョコレート嚢胞は、年齢が40歳以上もしくは嚢胞直径が10cm以上のものでは、卵巣癌の合併率が急増し、また卵巣チョコレート嚢胞の0.7%~1%が悪性化して明細胞腺癌、類内膜腺癌などに癌化します(参考文献 「病気が見える 婦人科・乳腺外科」)

当時の記録を見ると、服用始めて3ヶ月が経った頃、左側のお腹がチクチクしますとおっしゃっておられます。勿論ずっとではないので、気づいた事は何でも仰って下さいとお話して服用が続きます。半年経過した頃、診察の結果、4cmが5.6cmに大きくなっていると、どうしよう!と病院から診察後お電話を頂きました。

今でもこの時の電話を私はよく覚えております。電話の向こうで彼女が狼狽しているのが手に取る様に分かりました。信じて服用して下さっている訳ですから当たり前です。

漢方薬というのは、煎じ詰めれば如何にして血流を良くするか、どうやって良い血を巡らせるかだと私は考えています。血流が良くなれば免疫細胞も増えて、免疫力も上がります。その血流が悪いから滞って疾患が生じるのです。

漢方薬を飲み始めると血流が良くなって、患部にも栄養が届く様になるので一旦は数値が上がったり、患部が大きくなったりします。でもその段階を超えて更に漢方薬をのみつづけると、数値が下がったり、患部が小さくなったりします。

ここで突然ですが、少し血液の話をします。

なぜ血液の話?と思われるかもしれませんが、それはこれからお話する、人間の血液を構成している成分とその役割をお知りになれば必ず分かって頂けると思います。

良い血を増やす、血流を良くする事が、こころとからだの健康維持に、また病気の回復改善にとてもとても大切なのです。

血液というのはその主な成分が、赤血球、白血球、血小板、血漿の4つです。この中で血漿というのは、血液の液体成分で血液の半分以上を占めています。その殆どが水分ですが、その中に塩類(電解質)、タンパク質が溶けています。

血漿中の主なタンパク質がアルブミンで、アルブミンは血液の液体成分が組織に漏れ出るのを防ぎ、またホルモンや薬に結合して運搬する働きをしています。血漿中のタンパク質には、この他にウィルス、細菌、真菌、がん細胞などから体を保護する役割を担う抗体(免疫グロブリン)や、出血を止める血液凝固因子などがあります。

白血球にも5つのタイプがありますが、その内の1つのリンパ球には、3つのタイプがあり、Tリンパ球とナチュラルキラー細胞は、ウィルス感染から体を守っていて、がん細胞を発見して破壊する事もあります。3つ目のタイプのBリンパ球は、抗体(免疫グロブリン)を作る細胞です。(参考文献「MSDマニュアル家庭版」)

ここまで書けば、良い血を巡らす、増やすという事がどれ程大切かお分かり頂けたかと思います。

次回の更新(月曜日)で、患者さんの経過のお話を綴って参ります。