患者さんのこと その3 第四話

年が明けて弥生3月、お母様より「バレーボールをやってももう目がオロオロしなくなった。」と彼女が言っているとお聞きしました。初めていらした時の訴えがこれで解決されました。

7月に入って、グループホームから帰省した彼女が久しぶりに顔を見せてくれました。相変わらずの生真面目な佇まいでしたが、初めの頃の、主に話をされるのがお母様で、その横で表情乏しく座っておられた時と違って、笑い顔が見られるようになったのが私はとても嬉しかった。

自分から話もするようにもなって、夢中で彼女の話に耳を傾けたのを覚えています。体力がついたので就労する事に決めた事、手続きが大変だけれど仕方がないと思っている事、週に2回だけれど出来ればもう一回増やしたい事、半日なのでお弁当がでないので、自分でお弁当を作って持っていっている事、そしてお米はお母さんが応援してくれる事などを訥々と話してくれました。

深い感動を覚えていました。グループホームに入所したばかりの頃、何回かホームでの共同作業が辛い、疲れる、暑くて怠いとショートメールで訴えて来ました。まだホームの生活に慣れていないからだから、頑張り過ぎないで、責任者の方に少し慣れるまで軽減して貰うよう話をしてみたら等と助言にもならない事を返信した事を思い出していました。

つらい、しんどいと言えればOKだと、何でも言ってきてくれればそれがとても大事だと考えていました。結局彼女は、そう言いながらも段々適応して行き、体力的にも充分になり、ショートメールで訴えて来る事も少なくなりました。とても良い経過で、決して忘れる事はありませんが、心配しすぎる事もなく、年末を迎えます。

つづく