お待たせ致しました。
塀に斜めに立て掛けてある梯子の上を渡って塀の頂点に立ったら、向ヶ岡寮の敷地に向かってまた梯子の上を斜めに下って行きます。
多分向ヶ岡寮の当時の寮生の日常の通路であったのでしょう。私は言われた通りに「ふーん」と面白がりながら通いました。
通った日数は長くはなかったのですが、当時の寮内の様子は今でも時々思い出します。ちょっと荒れた感じの庭を抜けて玄関から寮内に入るのですが、入って直ぐが食堂であったようなちょっと右手側が広くなっていました。
ギシギシいう木の階段を上がると長い廊下になっていて、右側が窓、窓に沿って腰高の棚があって、そこに五徳とかが無造作においてあって使い古した感じのインスタントラーメンを作るような小鍋が置いてありました。
窓と反対側に各部屋の入口が並んでいて、「こんにちわ。」と入って行くその入口は古い木製の引戸でした。
その引戸を引くと中は六畳はなかったような…。畳の部屋でコタツがひとつ、布団は丸めて棚の中に押し込んであるのが見えました。
相部屋であったようですが、相方の方は私が伺う当日は家庭教師の邪魔になるからでしょう、いつもおられませんでした。
そのコタツの上で勉強を見て貰いましたが、夕暮れ時決して上手ではないけれど哀愁を帯びたバイオリンの音色が聞こえたり、窓から放尿をする寮生の話を聞いたり、偶然寮の階段辺りで鉢合わせした男子学生が、男子寮に女子がいるのに一瞬ギョッとした後何食わぬ顔で階段を降りていったり、、、
今でもセピア色した映画のワンシーンの様に懐かしく思い出されます。
今日はこの辺で。